医療情報コラム
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近年、肺がんの早期発見と早期治療の重要性がますます高まっています。しかし、「自分は大丈夫」と安易に考えてしまい、検診の機会を逃している方も少なくありません。このコラムでは、厚生労働省のデータを引用しながら、肺がんの現状と早期発見の重要性について解説します。
【肺がんの現状】増加する患者数と高い死亡率
まず、日本の肺がんの現状を見てみましょう。
☆肺がん患者数の推移
厚生労働省の統計によると、日本における肺がんの罹患数は年々増加傾向にあります。これは、高齢化社会の進展や生活様式の変化などが要因と考えられます。特に男性では、肺がんの罹患数が多い傾向にありますが、近年女性も増加傾向にあります。
☆死因の順位
2023年の人口動態統計月報年計(概数)によると、肺がんは現在、男女ともにがんの部位別死亡数で第1位となっています。これは、肺がんが早期に自覚症状が現れにくく、進行した状態で発見されるケースが多いためです。早期発見がどれほど重要か、この数字が雄弁に物語っています。
☆男女で異なる罹患率
肺がんの罹患率は、男女間で差が見られます。男性は、喫煙率の高さから肺がんのリスクが高く、女性よりも罹患率が高い傾向にあります。しかし、女性の肺がんも増加しており、喫煙歴のない方でも発症することが知られています。これは、受動喫煙や大気汚染など、喫煙以外のリスク要因が関与している可能性が示唆されています。肺がんのリスクは誰にでもあり得ることを認識することが重要です。
【肺がんの初期症状】
肺がんは、進行するまで自覚症状がないことがほとんどです。そのため、「症状がないから大丈夫」と自己判断してしまうことが、発見の遅れにつながります。一般的に見られる初期症状には以下のようなものがありますが、これらは風邪や気管支炎と間違えられやすいので注意が必要です。
*咳が続く:乾いた咳が2週間以上続く場合は要注意です。
- 痰に血が混じる:わずかな血でも見逃さず、医療機関を受診しましょう。
- 息切れ、呼吸困難:階段を上るだけで息が切れるなど、以前より息苦しさを感じる。
- 胸の痛み:鈍い痛みが続く、深呼吸で痛むなど。
- 声のかすれ:声帯の近くにがんができた場合に生じることがあります。
これらの症状は、がんが進行して気管や血管を圧迫し始めた際に現れることが多いため、症状が出る前に検診で発見することが最も望ましいのです。
【見つかってからの治療】
もし肺がんが見つかった場合、早期発見であれば手術による根治が期待できます。肺がんの手術は、がんの大きさや位置、進行度によって様々な術式があります。
- 肺葉切除術:がんのある肺葉を丸ごと切除する最も一般的な手術です。
- 区域切除術・部分切除術:がんが小さい場合、肺葉の一部分のみを切除する手術です。
- 胸腔鏡下手術:小さな切開口から内視鏡と専用の器具を挿入して行う手術で、身体への負担が少なく、術後の回復が早いのが特徴です。
最近では、身体への負担が少ない胸腔鏡下手術や、さらに進化したロボット支援下手術など、患者さんのQOL(生活の質)を維持しながら治療を行うための術式が主流となっています。しかし、これらの手術は、早期の段階で発見された肺がんに適応されることが多く、やはり早期発見が治療の選択肢を広げる鍵となります。
当院では、ロボット手術Da Vinci サージカルシステム認定医の資格を持ち市中病院で数多くの肺がん手術を手がけている肺がん専門医による専門的な診察を受けられます(毎週土曜日午前中のみ。基本的に予約不要です。)
☆専門医によるダブルチェック体制
CTやX線画像診断の専門医(放射線画像診断専門医)と、肺がん専門医のダブルチェック体制が可能です。これにより、精度の高い診断を提供します。
- 胸部X線検査:肺全体の異常を広範囲に確認します。読影の専門医が丁寧に読影します。
- 胸部CT検査:X線検査では見えにくい小さな病変や、心臓、骨などの陰に隠れた病変を発見するのに非常に有効です。当院では、低線量CTを導入しており、被ばくを抑えつつ精度の高い検査が可能です。
- 最新の治療に精通した専門医が在籍
毎週水曜日と土曜日は、現在大学病院等で肺がんの最新治療に携わる専門医が当院で診察を行っています。検診結果について、より専門的な意見を聞くことができるため、万が一、肺に異常が見つかった場合でも、最先端の知見に基づいた診断とアドバイスを受けることができます。 - 万が一の場合も迅速な連携
もし肺に病変が見つかった場合は、その後の迅速な対応がとても重要になります。当院の肺がん専門医が連携している専門施設へのご紹介が可能であるため、検査して終わり、ではなく、その後の治療に向け患者さんが安心して次のステップに進めるようサポートします。
【まとめ】
肺の健康は定期的な検診から
肺がんは、早期発見できれば決して怖い病気ではありません。しかし、自覚症状が出にくいという特性から、定期的な検診を受けることが大切です。
当院では、胸部X線検査に加え必要に応じて、より精密な胸部CT検査が受けられます(CTは平日午前中のみ)画像診断の専門医と肺がん専門医による精度の高い診断、そして病変が見つかった場合は速やかな対応を行います。
「病は気から」という言葉がありますが、肺の健康については「病は検診から」と捉えてみてください。忙しい毎日の中で、ご自身の身体、特に肺の健康について考える時間を作ってみませんか。
当院は、皆さまが安心して肺の健康診断を受けられるよう、万全の体制を整えております。ご不明な点があれば、お気軽にご相談ください。
















